チャート探しPart① 〜王滝村〜
取り組みの背景
はじめに結論を言ってしまうと、私は先史時代人の石器製作段階での加熱処理技術がチャート製の石材においても行われていたのではないかと考えている。
チャートとは、化学的にはほとんどシリカ(SiO2)からなり、鉱物学的には微細な石英の集合となっている堆積岩のことである。詳しくは、http://structure.cande.iwate-u.ac.jp/miyamoto/ground/chert.htm
加熱処理とは、
緩やかに温度を上昇させて比較的低温(500℃以下)で岩石を熱し、再び徐々に冷やすことによって剥離に関する性質を改善するという加熱処理の技術である(御堂島1993)。
既に、氏の取り組みにより、玉髄製石器の製作段階における加熱処理技術は、弥生時代中期後半から少なくとも縄文時代草創期まで遡ることが指摘されている(御堂島 2017)。
八ヶ岳山麓周辺の先史時代遺跡から出土する石器には、黒曜石の他にも様々な石材が利用されており、中でもチャートや珪岩(接触変成作用を受けたチャート)の利用が多く見られる。海外の研究事例では、チャートの加熱による変成作用が確認されているが、日本国内での基礎的研究、及び実資料での発見は進んでいない。
そこで、第一段階の基礎的研究として、チャート製の剥片への加熱による変成作用(再結晶化現象)を検証するために、実験用の石材獲得、及び原産地推定のフィールド調査として、資料調査や考古館職員の助言などをもとに各地へ足を運ぶ取り組みをスタートした。
王滝村へ
第1回の今回、富士見町の某考古館の職員さんより情報をいただき、木曽郡王滝村へ行くことにした。ご教授ありがとうございました。
自宅の茅野市より片道2時間以上、御嶽山が一望できる有名な滝に到着。
ここは、剣ヶ峰から御嶽湖へ流れる大又川の中流域である。
到着早々、歩道や河原などにチャートの岩脈が露出しており、川に崩れ落ちるポイントを発見した。
しかしながら、石器製作の石材としては質がイマイチで、さらに30分ほど歩いて上流へ行くがチャートは全く発見でき無かったため、岩石の河川への流れ込みでは、上流のポイントだと推定。
気晴らしに滝に近づくと、足元にチビながら良質な油質チャート(珪岩)を発見したため、匂うなと思ったが…
その後、鉄石英などもちらほらあるものの、石核になるような上ものは見つからず終了。結論としては、この流域のチャートは石材には適さないものが多いことが確認された。しかしながら、現代的な空間での解釈であり、当時の環境がそのまま保存されている訳ではないため一概にはそうとは言えない。
以後観光♪ 滝の裏側に岩陰があり、石像達が安置あれており神秘空間が広がる。しかし、そんなところの石を持ち帰ったためか、帰り道は、やけに身体が重く、何かついてきた模様。これから神秘体験が続かねばいいが…。
終わりに
学術的に至らない点、また、チャートに関する情報などございましたら、ご教授いただけると幸いです。
今後とも、よろしくお願いします。
文献
御堂島 正 1993 「加熱処理による石器製作ー日本国内の事例と実験的研究ー」『考古学雑誌』79-2
御堂島 正 2017 「石器の加熱処理と小瀬ヶ沢洞窟の石器」『山本暉久先生古稀記念論集 二十一世紀考古学の現在』六一書房